「空飛ぶ船」と聞くと、少し不思議な乗り物を想像するかもしれません。現在、商船三井と日本航空(JAL)が商用化に向けた取り組みを進めている「シーグライダー」は、まさに船と航空機の中間に位置するような次世代の乗り物です。
シーグライダーは、まず船のように水上を走り、速度を上げると翼によって水面近くへ浮上します。その後は、水面付近を飛行することで生まれる「地面効果」を利用し、高速で移動します。開発を進める米国REGENT Craftでは、完全電動による運航を想定しており、沿岸部や離島を結ぶ新しい移動手段として期待されています。
今回の取り組みで興味深いのは、海運会社である商船三井と航空会社であるJALが共同で参加している点です。シーグライダーは海の上を移動するため船舶に近い一方、高速で浮上して移動する姿は航空機にも似ています。そのため、社会に導入するには、船と航空のどちらか一方だけの知識ではなく、両方の分野で培われてきた安全運航や整備、運航管理の考え方が重要になります。
また、新しい乗り物を実用化するためには、機体の性能だけでなく、安全性をどのような基準で確認するのか、どのような条件で運航を認めるのかといった制度面の整備も欠かせません。今回のプロジェクトでは、商船三井とJALに加え、REGENT Craft、ロイド船級協会が連携し、日本での船体認証や運航許可の取得に向けた仕組みづくりを進めています。
商船三井は、2030年頃の日本での商用化を目指しています。実現すれば、これまで船で時間をかけて移動していた区間を、より短時間で結べる可能性があります。離島への移動や沿岸都市間の交通、さらには貨物輸送など、海上交通の選択肢が広がることも考えられます。
これまで海上輸送と航空輸送は、それぞれ異なる分野として発展してきました。しかし、シーグライダーのような新しい技術によって、その境界は少しずつ変わり始めています。船と航空機、それぞれの強みを組み合わせた新しい海上交通が、これからどのような形で社会に根付いていくのか注目したいところです。