船酔いはなぜ起こる?──船乗りに学ぶ酔いにくくする工夫

船に乗ったとき、だんだん気分が悪くなったりめまいや吐き気を感じたりした経験がある方もいるのではないでしょうか。いわゆる「船酔い」は、乗り物酔いの一つです。

人は、目から入る情報だけでなく、内耳にある平衡感覚をつかさどる器官などからの情報をもとに、自分の体がどのように動いているのかを判断しています。ところが、船が波によって上下左右に揺れると、目で見ている情報と体が感じている動きとの間にずれが生じます。こうした感覚の不一致が、吐き気やめまいなどにつながると考えられています。

興味深いのが、回転することの多いフィギュアスケートの選手です。スピンを何度も繰り返す競技ですが、研究では、経験を積んだフィギュアスケーターは一般の人に比べて回転刺激による乗り物酔いの症状が少ないことが報告されています。長年にわたり繰り返し回転することで、平衡感覚に関わる仕組みが刺激に適応している可能性があると考えられています。もちろん、選手がまったく目を回さないわけではなく、視覚的な手掛かりがない状況では熟練した選手でもめまいや方向感覚の乱れが生じることが確認されています。

船でも、「乗っているうちに以前より酔わなくなった」という話を聞くことがあります。これもフィギュアスケートとまったく同じ仕組みとは言い切れませんが、繰り返し揺れを経験することで、少しずつ慣れていく人がいることは知られています。

船酔いを防ぐ工夫としては、遠くの水平線を見る、船内でスマートフォンや本を長時間見続けない、比較的揺れの少ない場所を選ぶといった方法があります。また、船乗りの間では「体調が悪い日は酔いやすい」「揺れに逆らわず体を合わせたほうが楽」といった話も聞かれますが、こうした経験則には個人差もあります。

船酔いへの強さは人それぞれです。自分がどのような状況で酔いやすいのかを知り、無理をせず、自分に合った方法を見つけることも、船と上手に付き合うための一つの知恵といえるでしょう。

本日のひとこと

「習うより慣れよ」
人に教えられるだけでなく、自分で実際に経験を重ねることで物事が身についていく、という意味のことわざです。

船酔いも、船に乗る経験を重ねるうちに以前より酔いにくくなったと感じる人がいます。また、フィギュアスケートの選手が繰り返し回転する練習を重ねることで、回転する感覚に適応していくように、人の体には経験によって変化していく面があります。ただし、慣れ方には個人差があり、誰もが同じように船酔いしなくなるわけではありません。

仕事や日々の生活でも、知識として理解することと、実際に経験して身につけることには違いがあります。最初は戸惑うことでも、何度も経験するうちに少しずつ感覚がつかめてくるものです。学ぶことを大切にしながら、実際にやってみる経験も積み重ねていきたいですね。