船を安全に運航するうえで、「よく見ること」は基本中の基本です。しかし、安全運航を支える「目」は、操船者自身の目だけではありません。目視で周囲の状況を確認するとともに、レーダーやGPS、AIS(船舶自動識別装置)などの航海計器から得られる情報を組み合わせることで、より確実に周囲の状況を把握することができます。
船を操船するときには、他船の位置や進行方向、岸壁や防波堤との距離、波の様子など、さまざまなものを目で確認します。特に港内では、作業船や漁船、プレジャーボートなど多くの船が行き交うため、常に周囲へ注意を向ける必要があります。
一方で、人の目だけでは把握しにくい状況もあります。夜間や濃霧、雨天では視界が悪くなりますし、船の構造によって死角が生じることもあります。そこで重要になるのが航海計器です。
レーダーを使えば、暗闇や視界不良の状況でも、周囲の船舶や陸地などの位置を把握する助けになります。AISからは、対応する船舶の船名や位置、針路、速力などの情報を確認できます。GPSも、自船の位置を把握するために欠かせないものです。これらの航海計器は、人の目だけでは捉えきれない情報を補う重要な役割を担っています。
ただし、計器に表示された情報だけを見ていれば安全というわけではありません。実際の海面を見て分かる波の動きや、他船との距離感、相手船の細かな動きなど、目視だからこそ得られる情報もあります。また、計器の情報と実際の状況が一致しているかを確認することも欠かせません。
安全運航に必要なのは、「目視か計器か」という二者択一ではなく、それぞれから得られる情報を組み合わせて判断することです。
海の上では、一つの情報だけを信じ込まないこと。自分の目と航海計器という複数の「目」を使いながら周囲の変化を捉え、次に起こることを予測する。その積み重ねが、安全な運航を支えています。
本日のひとこと
「石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる)」
どれほど丈夫そうに見える石橋でも、叩いて安全を確かめてから渡ることから、用心の上にも用心を重ね、慎重に物事を進めることを意味する言葉です。
船の安全運航も、ひとつの情報だけで「大丈夫」と判断することはできません。自分の目で周囲を確認し、さらにレーダーやGPS、AISなどの航海計器から得られる情報と照らし合わせる。そうして幾つもの情報を確かめながら判断することが、事故を防ぐことにつながります。
慣れた航路や日常の作業ほど、「いつもと同じだから」という油断が生まれやすいものです。目で見て、計器で確かめ、少しでも違和感があればもう一度確認する。「石橋を叩いて渡る」の言葉のように、念には念を入れる姿勢を忘れず、これからも一つひとつの確認を安全運航につなげていきたいと思います。