みなさんは「水中ドローン」と聞くと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか。空を飛ぶドローンと同じように、人が入りにくい場所へ行き、カメラやセンサーを使って調査できる機械を想像する方も多いかもしれません。
水中ドローンは、船底や港湾施設の点検、海底調査、水産業、捜索など、さまざまな分野で活用されています。一方で、水中ならではの難しさもあります。
大きな課題の一つが「通信」です。空中では電波を使って機体を操縦したり、映像を送ったりすることができますが、電波は水中では届きにくくなります。そのため、遠隔操作型のROV(Remotely Operated Vehicle)は、通信や電力供給のために母船などとケーブルでつながれているものが一般的です。しかし、ケーブルが長くなれば重量も増え、海流に流されたり、構造物に絡まったりする可能性もあるため、行動範囲や運用方法に制約が生じます。
一方、ケーブルを使わず自律航行するAUV(Autonomous Underwater Vehicle)では、より広い範囲を移動できますが、通信には音波を使う音響通信などが必要になります。水中での音響通信技術は進歩しているものの、陸上の無線通信のように大量のデータを高速で自由に送れるわけではありません。JAMSTECでも、音響通信の距離や速度を高める技術開発が進められています。
さらに、水中では機体の位置を把握することも簡単ではありません。空中のドローンで広く利用されているGNSSの電波は水中まで届かないため、慣性航法装置や音響測位など、別の方法を組み合わせる必要があります。
バッテリーも重要な課題です。ケーブルを持たない機体の場合、航行だけでなく、カメラやライト、センサー、通信装置なども限られた電力で動かさなければなりません。長時間・長距離の調査を行うほど、電池容量と機体重量とのバランスが重要になります。
水中ドローンは、人が潜ることが難しい場所を調査できる便利な技術です。しかし、水の中には通信、測位、電力、ケーブルといった、空中とは異なる多くの技術的な壁があります。こうした課題が少しずつ解決されていけば、水中ドローンが活躍する場所は、さらに広がっていくのではないでしょうか。
本日の一言
「郷に入っては郷に従え(ごうにいってはごうにしたがえ)」
その土地や環境に入ったなら、そこでの習慣ややり方に従うのがよい、という意味のことわざです。
水中ドローンも、空を飛ぶドローンと同じ考え方だけでは運用できません。水中では電波が届きにくく、GNSSも利用できないため、音響通信や音響測位、慣性航法など、その環境に適した技術が必要になります。水という環境の特徴を理解し、それに合わせた方法を選ぶことが、水中で活動するための重要なポイントです。
仕事や日々の生活でも、これまでうまくいった方法が、環境や状況が変われば同じように通用するとは限りません。その場の条件をよく理解し、必要に応じて考え方や方法を変えていくこと。環境に合わせて柔軟に工夫する姿勢が、新しい可能性を広げていくのではないでしょうか。