港やマリーナで船を見ていると、「ボート」「クルーザー」「ヨット」といった呼び方を耳にすることがあります。見た目が似ている船も多いため、「大きさによって名前が変わるのかな?」と思う方もいるかもしれません。
実は、この三つは同じ基準で分けられた船の種類ではありません。
まず「ボート」は、比較的小さな船を広く表す言葉です。エンジンで走るものはモーターボート、帆を使って走るものはセールボートと呼ばれることがあり、「ボート」という大きな枠の中にさまざまな船があります。
一方、「クルーザー」は船の大きさよりも、主にその使い方や設備を表す呼び方です。「クルーズ」、つまりある程度の距離を巡航しながら船旅を楽しむことを想定し、キャビンと呼ばれる船室や、寝泊まりするための設備などを備えた船が一般的です。クルーザーにはエンジンで進むモーターボートタイプもあれば、帆で進むセーリングタイプもあります。
そして「ヨット」という言葉も少し複雑です。日本では「ヨット」と聞くと、大きな帆を張って風の力で進む船を思い浮かべることが多いでしょう。しかし本来は、レジャーやスポーツなどを目的とする船を指す言葉として使われてきました。そのため、エンジンで航行する大型のレジャー船が「モーターヨット」と呼ばれることもあります。つまり、「ヨット=必ず帆船」というわけではありません。
さらに、帆を使うヨットの中にも、船室を持たない小型の「ディンギー」と、船室を備えて航海や宿泊ができる「クルーザー」があります。つまり「ヨット」と「クルーザー」は別々のカテゴリーとは限らず、「クルーザーであるヨット」も存在するのです。
ちなみに、船舶の登録上はこうした日常的な呼び方とは別の分類が使われます。日本小型船舶検査機構の登録では、船舶の種類は基本的に「汽船」または「帆船」に分けられ、主に帆走するプレジャーヨットなどは「帆船」として扱われます。
ボート、クルーザー、ヨットという言葉は、大きさだけで決まるものではなく、動力や設備、用途などによって重なり合いながら使われています。港で船を見かけたとき、「これはどんな目的でつくられた船なのだろう」と考えてみると、船の見方が少し変わってくるかもしれませんね。
本日のひとこと
「名は体を表す(なはたいをあらわす)」
名前は、そのものの性質や実体をよく表している、という意味のことわざです。
ボート、クルーザー、ヨットという呼び方にも、それぞれ船の特徴や用途が表れています。しかし、実際には一つの船が「ボート」でありながら「クルーザー」と呼ばれることもあり、ヨットにもさまざまな種類があります。名前から特徴を知ることはできますが、呼び方だけですべてを区切れるわけではないところも、船の世界のおもしろさの一つです。
仕事や日々の生活でも、名前や肩書きから物事を理解できることがある一方、それだけでは分からない部分もあります。まず言葉の意味を知り、その先にある特徴や役割まで見てみること。身近な呼び方にも少し関心を向けることで、今まで何気なく見ていたものへの理解が深まっていくでしょう。