港に停泊する船を安全に接岸・離岸させるために欠かせないのが「綱取り」と「綱放し」です。普段はあまり目にする機会のない作業ですが、船の安全運航を支えるうえで欠かすことのできない重要な役割を担っています。
「綱取り」とは、船が港に着く際に船から投げ渡されるロープ(係船索)を受け取り、岸壁に設置されたビットと呼ばれる金具に固定する作業を指します。この工程によって船体がしっかりと固定され、乗客や貨物が安全に乗り降りできる環境が整います。風向きや潮の流れ、船の大きさによって最適な綱の取り方や順序は異なるため、現場ではその都度、経験と判断力が求められます。
一瞬の判断の遅れやわずかな手違いが大きな影響を及ぼすこともあるため、常に緊張感をもって臨む仕事です。
一方「綱放し」は出港時の重要な作業です。固定された綱を順に外し、船が安全に離岸できるようにサポートします。エンジン始動から岸壁を離れる瞬間まで、船側との息の合った連携が求められます。まさに、港と船が一体となって動く瞬間です。
一見すると地味な作業に見えるかもしれませんが、港の安全はこうした現場の積み重ねによって守られています。見えないところで支える力があってこそ港は機能し、船は安心して航海を続けることができるのです。私たちは今日も安全で確実な港の運営を支えるために、一つひとつの作業に誇りを持って取り組んでいます。
本日のひとこと
三つよりの綱はすぐには切れない【旧約聖書『伝道の書』より】
一本の糸は弱くても、三本を撚り合わせれば強くなる――。
この言葉は、人が力を合わせ、支え合うことで困難を乗り越えられることを教えています。互いの違いを認め、補い合うことでこそ、強くしなやかな絆が生まれます。
たとえ荒波の中でも、しっかり撚り合わされた綱は切れません。
私たちもまた、信頼と協力の糸をより合わせ、今日も港の安全を支えてまいります。